一つの起点
TIME GATE   HARD FINAL EPISODE


 その後、アルバート王の提案で全員が会食に招待され、アクレド達が自警団本部に戻って来たのは、夜遅くになってからだった。フェルスナーを保護した時から、団員には自宅で待機するように伝えていたため、帰ってきたとしてもガランとしていた。
 フェルスナーとデュエイは城で保護してもらおうと思ったが、二人が自警団で待っている方がいいと言ったので、この四人が自警団に滞在することになった。アクレドとレガーノはここに住んでいるので問題ないが…。
 そんなアクレドもレガーノも、こんな時間だというのに外で特訓をしていた。一週間後にゼストウラに突撃するという、今まで経験したことの無い大きな戦いを目の前に、不安を隠しきれないといった様子だった。
 フェルスナーとデュエイはそれに参加せず、窓から二人の様子を見ているだけだった。

「デュエイは修行しないの?」
「修行を続けるのもいいことですけど、休める時に休むのも戦士の務め。後で酷い疲労となって返って来ても良くないです」
「それと…あたしの護衛…だよね?」
「その通りです。私は絶対に離れたりしません」

 デュエイは真っ直ぐなくらい、フェルスナーに忠誠しているが、時折見せる表情には、どことなく悲しい何かが見え隠れするときがある。今の表情もそうだった。

「それに、新しい時代が来ることでしょう」
「え?」
「アクレドとレガーノを見ていると、二人はまだまだ未熟ですが、すぐに私よりも強い人間になってくれますよ」

 強い人間…。フェルスナーには重く響くことであった。本来なら、ダイハナン王家の最後の一人である自分が頑張らなければいけないのに、従者であるデュエイやゴルトル、アルバートの国民のアクレドやレガーノが頑張ってくれている。自分が戦わなければいけない時に、自分は怖くて動けなくいる。フェルスナーは弱い自分を恨めしく思った。

 ドガッ!

 突然大きな物音がしたので、二人は咄嗟に窓から外を見た。するとレガーノが倒れていて、その前にアクレドが立っていた。その体勢のまま二人は睨み合っている。
 一人で修行を続けていると思ってたのだが、いつの間にか二人での実戦訓練に切り替えていたようである。模造剣なので大怪我はしない。

「行くぞ!無影剣!」
「ファイヤーボール!」

 端から見れば、真剣勝負に見えるくらい激しく戦っている。攻撃をまともに喰らっても、手を止めることなく続けている。

「ちょっと刺激を与えてみますか…」

 デュエイは立ち上がると、側にあった模造剣を持って外に出た。

「随分頑張っているようだ」

 デュエイの声に、さすがに二人は戦いを中断して振り向いた。

「何の用だ?用があるならレガーノとの修行を終えてからにしてくれ」

 アクレドが修行を再開しようと剣を振り下ろしたが、デュエイが突き出した剣で簡単に止められてしまった。

「二人とも、どれくらいの強さなのか、俺が直接相手をしてやろう」
「何!」

 ダイハナンの兵士長であるデュエイが、直接二人の相手をしてくれると言うのだ、自分の実力を知るのにいい機会かもしれない。

「二人掛かりでいいのか?」
「遠慮するな。俺も手加減するから」

 戦いを目の前にして気持ちが高ぶっているのか、少しだけ二人を見下しているデュエイの態度に反感を買い、怒りに任せてアクレドが先に飛び掛った。

「ふざけんな!空流剣!」
「シュッ!」

 それよりも素早くデュエイが円を描くように剣を回転させて、逆にアクレドにダメージを与えた。アクレドは突き飛ばされ、立ち上がるのに時間が掛かった。

「サンダー!」

 アクレドが攻撃されたのに気付き、レガーノが咄嗟にサンダーを放った!だが、サンダーが落ちる寸前にデュエイが消えたのを二人は見逃さなかった。一瞬にして消えたことに焦り、二人は当りを見回すがデュエイの姿はどこにもない。

「レガーノ、後ろだ!」

 レガーノは前方に飛んで逃げようとしたが、背中を剣で打たれて叩き落されてしまう。

「くっ…うう…」
「無影剣を喰らえ!」

 昨日、デュエイに一回で見切られていた必殺技だったが、昨日に比べると幻の剣の数が多くなっていて、どれが本物か解かりにくくしていた。
 デュエイはその幻の剣に臆する様子は無く、じっと構えて本物の攻撃が来るのを待ち続ける。

「(もらった!)」

 デュエイの左から攻撃しようとアクレドは狙ったが、デュエイはそれを見切っていたかのように最小限の動きで避けてしまう。避けられたことに気を取られたアクレドだったが、デュエイが攻撃しようとしているのに気付き、ギリギリで攻撃をかわした。

「じゃあ、次はこっちから仕掛けさせてもらおうか」

 デュエイが攻撃態勢に入り、二人に緊張感が走る。
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