運命の架け橋
TIME GATE   HARD FINAL EPISODE


 そろそろ決着をつけないと、このままでは状況は悪化する一方だというところまで戦いが進んでいたが、レガーノにはある考えがまとまっていた。岩人形の攻撃を避けながら何とかアクレドのところまでやって来た。

「アクレド、空流剣はまだ使えるか?」
「ああ、アイテムでMPを回復させておいたから、まだ何回か使えるぜ」
「あいつのヒザの関節の部分を狙ってくれないか?」
「ヒザ?」
「いいから、言った通りにやってくれ」
「…よく解からないけど、考えがあるのならやってみる」

 そう言い終えると、岩人形の攻撃を避けるように二人は分散した。
 アクレドは岩人形の攻撃を避けながら、徐々に距離を詰めていた。至近距離から空流剣を放つためである。レガーノはデイスの詠唱をしながら、アクレドが岩人形のヒザを攻撃するのを待ち続けた。
 アクレドが一気に距離を詰め、岩人形の足元に辿り着いた。そして間髪置かず空流剣で岩人形のヒザを狙った。岩人形もアクレドを踏み潰そうと足を上げたところを狙われたので、アクレドの空流剣は岩人形のヒザを確実に破壊し、岩人形の足が宙に舞った。

「上出来だ!この瞬間を狙っていたんだよ!」

 レガーノが飛び出て来て、デイスの魔法を放った。洞窟内に爆音が響き、辺り一体が衝撃で揺れた。二人が魔法を放った場所を向き直すと、すでに岩人形の切り離された足の部分は粉々になっており、砂になって落ちて行った。さっきまで攻撃が効いてなかったのに、それがウソのようにも思えるほど効いている。

「く、空流剣が効いたのか?」

 あっさり一部を破壊できたことにアクレドは呆気に取られていた。

「奴の体は、魔法で岩を練成して作られたものなんだ。本体から切り離すと、どうやら普通に岩に戻るみたいだ」
「だから、あんな簡単に破壊できたのか」」
「しかも、あれだけの重量を支えている膝の関節は弱点じゃないかと思って、だから狙って攻撃して欲しかったのさ」
「なるほどね、でもこれじゃあまた再生するんじゃないのか?」

 さっき両足を破壊した時も、簡単に再生されたのを忘れているわけではない。しかし、レガーノは岩人形が倒れるのをゆっくりと見つめていた。アクレドも駆け寄り、岩人形の再生が始まるのを見つめていた。さっきと変わらない様子で岩人形の再生が始まろうとしていた。

「やっぱりな」
「何がだ?」
「アクレド、こいつの再生速度を見て気にならないか」
「ん?」

 アクレドは岩人形の方を見直した。先ほどに比べると、復活にに時間がかかっているようにも見える。前はとっくに立ち上がって、再び襲い掛かっていた。

「片足の再生だけなのに…やたらと時間がかかっているな」
「おそらく、練成の魔力で回復していたんだろうけど、その魔力が尽きようとしている」

 岩人形が再生を終えたが、アクレドとレガーノを襲おうとはしなかった。まるで立っているのが精一杯で、まともに動けないようにも見える。岩人形はアクレドに向かって進もうとしたが、重さを支えきれない体が崩れ、岩人形は普通の岩に戻ってしまった。

「ふう、やっと終わった」
「まったく手こずらせやがって」
「あ…あの…もう大丈夫でしょうか?」

 フェルスナーが心配な様子で、物陰から顔だけを出して伺う。

「心配ないよ、バケモノはもう倒したから」

 フェルスナーはそれを聞いて安心し、物陰から出てきた。ドレスが砂埃で汚れていたので、手で払う。レガーノが良く見ると、ドレスの裾は土と砂で汚れていた。今後フェルスナーを同行させるとなったら、服装も考えなければならないだろう。

 突然、物凄い音がして地面が揺れた。アクレドとレガーノはバランスを崩さないように持ち堪えているが、フェルスナーはその場に座り込んでしまった。それから数秒で揺れは治まった。幸いにも洞窟内は崩れてないようだ。

「今の…地震か?」
「それにしては妙だな」

 二人は、よく解からない様子で上を見上げる。しかし天井はコケと水滴があるだけで、変わった様子はない。と、思っていると再び地面が盛り上がり、倒したばかりのはずの岩人形が二人の前に現れたのである。しかも今度は岩人形が二体もいるのだ。

「バ…バカな…無限に現われるって言うのかよ」
「アクレド、どうやらこいつらは、とことん儀式の邪魔をしたいらしい」

 レガーノの台詞がアクレドに引っかかった。自分達の目的は、岩人形を倒すことではなく、あくまでもフェルスナーの儀式を終わらせることである。無理に倒す必要があるのと、儀式を終わらせるのは違うと言うことだ。

「フェルスナー様!こいつらは食い止めますから、今の内に儀式の泉へ!」

 アクレドがそう叫ぶと、フェルスナーは我に返ったかのようにハッとなり、急ぎ足で建物の中に入って行った。戦いを知らないフェルスナーだったが、アクレドとレガーノが不利な状態にあるのは理解できたからだ。

「アクレドさん、レガーノさん、どうかご無事で!」

 神殿の中を進むと、石造りの泉があり、目の前には女性を形をした石像が立っていた。その首には青い首飾りが掛けられていた。亡き母が身に着けていたものと全く同じである。フェルスナーは石造からそれを取り外すと、自分の首に掛けた。
 すると突然首飾りが強く光り始め、神殿内を明るい青色で照らし出した。フェルスナーはその光に圧倒されそうになったが、なぜか光の中に懐かしいものを感じ、光の中を見つめていた。

「お…お母様?」

 フェルスナーは、光の中に亡き母の姿が見えていた。青い光に包まれているが、それが亡き母であることは間違いなかった。

「フェルスナー、これで儀式は終わりです…。これから大変でしょうけど、あなたはこれからのダイハナンを背負って生きていく存在なのです」
「お母様…」
「それに貴方は一人じゃありません、デュエイやゴルトル、そして何よりも素晴らしい仲間がいるのですよ」
「アクレドさん!レガーノさん!」

 フェルスナーは、二人はまだ外で戦っているのを思い出した。

「儀式を終えた貴方は、外にいる番兵を沈める力を持っています。さあ、貴方の力で仲間を守るのです」
「ありがとう、お母様」

 やがて青い光が消え、辺りには静寂さが戻っていた。

「ありがとうお母様…。私は…きっとダイハナンを再建させて見せます」

 フェルスナーはそう言い残し、二人のところに戻ることにした。

「さっきのよりも強い…」
「もう持たないぜ…」

 二人は背を合わせながら身構えていた。武器を持つ手が振るえ、戦う力が残ってないのがハッキリと解かる。本当に限界が近い。
 二体の岩人形は、攻撃をためらうかのように動きを止めたかと思うと、二体同時に魔法を唱え始めたのである。

「が、合体魔法だと?デカイのが来るぞ!」
「万事休すか…!」

 もうダメだと思いながらも、身を構えて耐えようとする。だが、いつまで待ってても魔法が飛んでこないので、怖々と目を開けると、そこには信じられない光景が写っていた。
 目の前にはフェルスナーが立っていて、両手から青い光が放たれていたのである。その光は二体の岩人形に向けられており、その影響で岩人形は大人しくなっているようだ。

「岩人形の番兵達、貴方の役目はここまでです。そして私は儀式を終えました。さあ、土に戻りなさい」

 フェルスナーが優しく言うと、それまで二人を襲っていたはずの岩人形達は、フェルスナーの言葉にに従うかのように土に戻っていった。何がなんだか解からないが、もう戦わなくてもいいのを知り、アクレドとレガーノはその場に座り込んで息をついた。

「アクレドさん、レガーノさん。ご無事で何よりです。お二人のお陰で、無事に儀式を終えることができました」
「お…終わったのか」
「はぁ…もう少しで死ぬところだったぜ」
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