運命の架け橋
TIME GATE   HARD FINAL EPISODE


 アクレド、レガーノ、フェルスナーは、特に問題もなく洞窟を進んでいた。モンスターもそれほど強くないし、光ゴケのお陰で洞窟内はどこまでも明るいままなのだ。どこまで続いているのか解からないが、とりあえず行くしかない。

「ん?」

 レガーノが急に立ち止まって耳を澄ませた。レガーノは聴覚が人より優れていて、遠くの音も聞き分けることが可能なのだ。

「水の音が聞こえる」
「水…?」

 アクレドはこの先に川でもあるのかと思ったが、外より寒いこの気温では凍っているはずなのに気が付いた。レガーノもそれが解かって不振な顔をしてしまう。

「もしかして、その儀式の泉があるんでは?」
「かもしれないけど、洞窟にしては簡単すぎるな」
「ま、普段人も寄らないし、儀式のためにあるから、複雑じゃなくてもいいのかもな」

 三人は終点が見えてきたと思って足取りが軽くなった。少々分かれ道があっても、レガーノが水の音が聞こえる方向を聞き分けてその方向に行けば迷うこともない。
 やがて、大きな階段を下りたところで三人は足を止めた。そこは大きな空洞になっていて、まるで大部屋を造り上げているようにも思える。そしてその中に、古びてはいるが、人工的な建造物が存在していたのだ。

「こんなものが洞窟の中にあったのか。儀式の場所なだけに、豪勢にやりたいってことかな。ちょっと古びているみたいだけど」

 三人が入ろうとすると、突然地震が起こった。あまりの揺れで三人は立てなくなっていた。アクレドとレガーノは洞窟が崩れることを恐れて警戒体勢になる。やがて地震がおさまり、落盤するような音も聞こえなくて三人はほっとした。

「ふう、こんな時に地震かよ」
「でも、何も起こらなかったみたいだし良かったな」
「でも、タイミング良すぎないかしら?まるで私達がここに入るのを拒むかのように…」

 フェルスナーがそう言うと、突然地面が盛り上がって巨人のような形を作り始めた。そして大きな岩人形ができたかと思うと、独りでに動き始めたのである。
 三人は何事かと思って近付くと、それに気付いたのか、大きな岩人形の拳が三人を目掛けて振り下ろされたのである。レガーノが攻撃を回避し、アクレドはフェルスナーを抱いて遠くまで飛び退いた。

「クソ、簡単には入れないって事か!」

 アクレドが剣を抜いて攻撃をしたが、岩で作られた体は硬く、ダメージを与えるどころか、剣を持った手が痺れるだけだった。

「ファイヤ!」

 レガーノも負けずに魔法で応戦するが、岩に炎が効くはずもなく岩人形の注意を自分に引き寄せるだけであった。岩人形がレガーノを踏み潰そうとするが、レガーノは全部避ける。だが、岩人形の動きが意外と速く、避けるだけで精一杯になってしまう。

「空流剣!」

 アクレドの必殺技が岩人形の足に命中すると、岩が少しだけ欠けて岩人形は数歩後ろに下がってしまう。だが、それも大した効果はなく、岩人形を怒らせただけなのかもしれない。岩人形はまるで怒ったかのように、近くにあった岩を持ち上げて二人に向けて投げ始めた。
 こんなものをまともに受けてしまえば、それだけで死んでしまうので。二人には避けることしかできない。だが、普通の攻撃もまともに通用しない化け物を相手に、どうすればいいのかと考えてしまう。

「アクレド、十秒時間を稼げるか?」
「…できるけど、何をする気だ?」
「ファイヤが効かないけど、さっきの空流剣は効いてたよな。だったら俺も衝撃の強い魔法を使いたいと思うんだ」
「デイスの魔法か」
「ああ、だけど得意じゃなくて詠唱に十秒掛かる」
「解かった、お前に任せるよ」

 アクレドが素早く岩人形に近寄った。岩人形の足を踏み台にして飛び上がり、腰の辺りを空流剣で攻撃して注意を引き寄せた。これも効いたのか、岩人形もレガーノを無視してアクレドに集中して攻撃を始める。

「OK!準備できたぜ!これでも喰らえ!」

 詠唱が終わったレガーノも、岩人形の足を目掛けてデイスの魔法を放った。大きな爆発が岩人形の足を襲い、周囲に砂埃が巻き上がる。

「はは、レガーノの奴、やりやがったぜ」

 デイスの魔法が岩人形の片足が崩したため、立てなくなった岩人形は片膝を付いて動けなくなっていた。レガーノはここで油断してはいけないと思い、再びデイスを唱えて岩人形のもう片方の足も攻撃した。
 同じように残っていた方の足も崩れ、立つことができなくなった岩人形はそのまま倒れてしまった。手がまだ動いているが、立てなくては攻撃もできないに決まっている。

「はっはっは、見たか化け物。このアクレドと、相棒のレガーノに勝てるわけがないだろう」

 だが、岩人形が手の動きも止めたと思うと、岩人形の足元の地面が盛り上がり、崩れた足を守るかのように包み始めたのである。崩れた両方の足を包みながらモコモコとしばらくの間動いていたが、急に止まって引っ込んだかと思うと、岩人形の足が元に戻っていたのである。岩人形も再び立ち上がる。

「バ、バケモノが!不死身だって言うのか?」

 岩人形の容赦ない攻撃がレガーノを襲う。レガーノも必死で避けるが、さっきよりもパワーアップしているのか、素早い動きを避けきれず捕まってしまった。岩人形はそのままレガーノを投げ飛ばして壁に叩きつけた。

「ガハッ!」

 思い切り岩壁に叩きつけられたレガーノは、血を吐いてそのまま倒れてしまった。死んではいないが、ダメージが大きいのか動けなくなっていた。

「よ、よくもレガーノを!」

 アクレドはパワーを集中させ、強力な空流剣を発動させていた。そのまま物凄い勢いで岩人形の頭の部分を攻撃したが、体の硬さも増しているのか、アクレドのフルパワーの必殺技も弾かれてしまった。

「バ…バケモノめ…」

 フルパワーで技を放ったため、アクレドの体力は大きく消費されてしまった。レガーノもヨロヨロと立ち上がるが、ダメージが大きくてまともに動けない。

「アクレド…こんなバケモノの話は聞いてないぜ」
「俺もだよ…こいつは不死身なのか」

 二人とも持って来ていたヒールポーションで回復を間に合わせた。体力が元に戻っても攻撃が効かないのであれば、状況は変わりはしない。
 レガーノのデイスも先ほどに比べて効かなくなっているので、無駄に魔法を使うことができなくなっている。

「いくら硬くてもな、攻撃を重ねればダメージは蓄積されるはずだ!」

 アクレドは岩人形の攻撃をかわしながら、右足のある部分ばかりを狙って攻撃を始めた。一発一発はあまり効いてないが、数発も当てているうちに効き始めたのか岩人形がバランスを崩してよろめき始めた。
 レガーノも応戦しようとしたが、足元に何かが当たって止まってしまう。それは先ほど岩人形の足を崩した岩の残骸であった。

「………」

 レガーノがそれを弱めのデイスで撃ってみると、簡単に破壊されてしまった。本体から切り離せば岩でしかないようだ。

「これは…もしかしたら…」

 この時、レガーノの頭の中にある考えがまとまっていた。 
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