運命の架け橋
TIME GATE   HARD FINAL EPISODE


「儀式の泉って?」

 フェルスナーがのんびりと聞く。デュエイが答えようとしたが、思ったよりも傷が痛むのでゼファルが答えることにした。

「まずはフェルスナー様、今年で十六歳になられたとのことで、おめでとうございます」
「あ、ありがとう」

 突然の祝福の言葉にフェルスナーは拍子抜けた。

「フェルスナー様、あなたの母上様がいつも、青い首飾りを身に着けられていたことは覚えておられますか?」

 フェルスナーは幼い時に母を亡くしているので、顔も肖像画でしか解からないのだが、それでも空の様にキレイな青色の首飾りは印象的で覚えていた。

「ええ…でも、亡くなられてから見てないわね。棺の中かしら?」
「いえ、あの首飾りは儀式の泉にあります」
「どうして?」
「あの首飾りは、アルバートを継ぐ者だけが身に着けることができるものなのです。そしてその者が亡くなると、儀式の泉に戻り、アルバートを継ぐ者が再び取りに来るという、昔からの慣わしがあるのです。それに、その儀式はどんな理由があっても十六歳からしか受けることができないと言うわけなのです」
「で、それはどこにあるの?」
「アクレド、レガーノ」
「うん?」
「ライファの森を抜けたところを西に行けば、山の中にあると言う洞窟があるよな?」

 確かにライファの森を抜けてすぐ西に行けば洞窟があった。昔は盗賊が本拠地として使っていたのではないかという説もある。国によっては中級冒険者等の修行の場として開放されていた洞窟ではないかという説もある。どの説が正しいのか、今では知り様もないが…。

「お前達がフェルスナー様をあそこまで案内するんだ。俺は身分上そうはできないし、デュエイの看病も必要だからな」

 デュエイも体を起こす。

「洞窟の中に儀式の泉があって、そこに首飾りがある。それを身に着ければ、言うまでもなくダイハナン王女だと解かってもらえ、フェルスナー様は保護される」
「なるほど」

 身分を証言するより、確実に証明できるものを提示した方が良いに決まっている。

 デュエイは戦闘不能、ゼファルは看病ということで、アクレドとレガーノがフェルスナーを連れて行くしかないということになった。フェルスナーは顔を見られると良くないということで、会った時に身に着けていたローブを着てもらうことにした。多少ボロボロだが、この方がいい。
 アクレドとレガーノも身支度を整えて、すぐに出発することにした。

 洞窟に行くなら、昨晩火事のあったあの森を通らなければならない。昨日のことを思い出すと足取りが重くなる。あの黒マントの男に再び会いそうで怖い。
 気が乗らないまま森の手前に来ると、被害状況を調べているのか多くの兵士が森の調査をしている。ライファの森はほとんどの木が真っ黒に焦げていて見る影もなかった。今思えば、必死だったとはいえ、よくあの業火の中に飛び込めたものだと我ながら感心してしまう。
 アクレドが遠目ながら森の様子を見ていると、二人のことをよく知る兵士が近付いてきた。

「よう、お前達。昨日は大変な目に合ったな。このライファの森を一晩で丸焦げにするほどの炎の中で、奇妙な男に会ったんだよな」
「ああ…何者なのか全く解からんけどな」
「見慣れないお供を連れて、森の調査に来たのかい?」

 兵士はローブを被ったフェルスナーを見て言う。フェルスナーは正体を悟られないようにと、着ていたローブを更に深く着込んでしまう。アルバート兵となると、ダイハナンのフェルスナー王女の顔を知らないわけがないのだから。

「いや…ちょっと洞窟に用事があってな」
「あの洞窟に?何しに行くんだ?」
「そ…それは…」

 アクレドが答えに詰まってしまった。儀式の泉と答えてしまうと、その線からフェルスナーの存在に気付かれる恐れがあるからだ。

「地盤の調査だ」

 レガーノが代わりに答えた。

「昨日の火事で、地質関係に影響が出ている可能性がある。アルバートは雪原地帯だから地盤の不安定な箇所もある」
「それはそうだけど、それをお前達が?」
「兵の大半は森の調査で出されている、直属でない俺らを使うのは正解だろう」

 ウソながら、それらしい答えが言えるのは凄かった。それに森の調査で他のことに手が回らない以上、多少のことなら兵士も大目に見るしかないのだ。
 結局、確認を取るまでのことでもないし、単なる地盤調査だけなので問題ないということで三人はあっさりとクリアできた。

「レガーノ、ウソながらよく思いついたものだな」
「俺も不思議に思ってしまうよ」
「まあ、通れたし、問題ないと思いますよ」

 三人は黒くなってしまった森を背にして洞窟へと向かって行った。
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