運命の架け橋
TIME GATE   HARD FINAL EPISODE


 あの火事から一夜が明けた、あの炎は突然消えたことで解決された。森入り口で会ったあの男は情報を聞くと言うことで兵士と一緒に城へ行った。アクレドもレガーノも、森の中で会った黒マントの男が只者で無いことが解かっていたので、黙っておくことにしておいた。森の中で発見した二人組みは、少女の顔をどこかで見たことがあるような気がして、城に知らせない方がいいという判断で自警団本部に保護せず、アクレドの家で保護することにした。

 朝日が窓から差し込み、その明るさでアクレドは目を覚ました。あの二人組みをベッドで寝かせていたため自分はソファーの上だった。二人組みはあの状況下に置かれていたため、よほど疲れていたのか、まだぐっすりと眠っている。男の方も軽い怪我程度で命に別状も無かった。

 城に知らせるのは後にするつもりだが、自分の家で無意味に保護するつもりも無いので、レガーノには夜明け前からアルバート聖騎士団本部に行ってもらいゼファル団長に来てもらうよう頼んでおいたのだ。聖騎士団は自警団である二人とは長い付き合いになるので、直接頼めば来てくれるだろう。

 アクレドはあの少女の顔をどこかで見たことあるような気がする。だけど思い出せないでいた。もしかしたらゼファル団長なら知っているかもしれないので見てもらおうとも思っている。そしてあの黒マントの男のことも…。

「うう…ん…」

 少女が目を覚まし、アクレドはソファーに腰掛けて笑顔で挨拶をする。

「よっぽど疲れていたんだな。まだ休んでいていいぜ」

 アクレドはそれだけ言って奥の部屋に引っ込んでしまった。少女の隣のベッドには一緒にいた男が眠っていた。軽い怪我を負っていたのか、体に包帯が巻かれていて適切な治療がされていた。少女はそれを見て安心した。
 しばらくして奥の部屋からいい匂いがすると思ったら、アクレドはスープとパンを用意して出て来てテーブルに置いた。

「腹減ってるだろう?その男は休ませておいて、俺らは飯にしようぜ」

 少女は言われるがままにテーブルに着いていただくことにした。

「おいしいスープですね」
「どこにでもあるスープだと思うけどなあ」
「初めて食べたわ」
「へえ、あんた変わってるな。このスープを知らないなんて」

 何気なしに食べ続けるアクレドだったが、途中であることが気になった。さっきから少女の食べ方を見ているのだが、あまりにも上品っぽい食べ方をしているのだ。まるで大富豪の娘が食べているかのように見える。作法にうるさい家庭で育ったのだろうか?
 食事を終えたところでアクレドは一息ついた。少女は下向き加減になって何か言いたそうな顔をしている。

「すいません…助けてもらった上、食事までいただいて」
「気にすることじゃない。これが俺ら自警団の仕事だ」
「あ…あの…あたし…」

 少女が何か言いたそうにしたが、アクレドは少女の口の前で人差し指を突き立て、まだ言わなくていいよという顔をして答えた。

「俺の相棒がもうじき帰ってくる。それから話してもらおうと思うんだ。城の関係者でも良かったんだが、どうもあんた達が只者じゃないと思ったんで、俺らの信用できる人が一緒に来てもらうことになるけどな」
「あたし達はお城に用があったんですが…」
「どっちにしても、そこで寝てる相棒があんな状態じゃ行けないだろう」

 会話の声が聞こえたのか、男の方も目を覚まして起き上がった。

「おっと、まだ寝ていた方がいい。疲労と重なってるせいで、傷の治りが悪くなってる」
「キミが助けてくれたのか?」
「相棒が一緒だけどな」
「そ、そうか…本当に感謝しているよ。そ、そうだ。フェルスナー様は?!」
「デュエイ…あたしはいいから、ゆっくり休んで」
「あなたが無事なら、私は構いません。あの森の火事の中でも、私はあなたを守って死ねるなら悔いはないと思ってました」

 アクレドがそれを聞いて笑い出す。

「カッコイイねえ。女のために死ねるなんて、カッコイイこと言うね。でも、ちょっと歳が離れているんじゃないか?」
「わ、私はフェルスナー様とそういう関係じゃ…」
「照れるな…ん?フェルスナー?どこかで聞いた名前だな」

 そこでアクレドは思い出した。フェルスナーと言えば、ダイハナンの王女の名前が確かフェルスナーだったはず。そしてデュエイと呼ばれた相棒は、フェルスナー王女の従者として仕えているのダイハナン兵士長の同じ名前である。

「ま、まさかね」

 これが本物なら…。アクレドは粗末な朝食を進めたことを後悔していた。

「アクレド、いるか?」

 昼近くになってレガーノが帰って来た。後ろには聖騎士団団長のゼファルもいた。レガーノが一通り説明してあると言うことなので、直接会ってもらった方が早いだろう。ゼファルは荷物をテーブルに置いてベッドに歩み寄る。

「ゼファル!」
「デュ、デュエイ?それにフェルスナー様も!」
「ほ、本物なのか」

 アクレドが恐る恐る聞くと、ゼファルは頷いた。素朴な朝食をあろうも事か、ダイハナン王女に進めてしまったことは当分は後悔することになるだろう。フェルスナーの“おいしかったし、気にしてませんよ”という言葉はアクレドに届いてなかった。

「デュエイ、どうしてお前がフェルスナー様とアルバートに?それにお前ほどの者がどうして重傷を負っているんだ?」

 デュエイは痛みに耐えながら体を起こした。デュエイは思い詰めた表情になる。フェルスナーもみんなと視線を逸らし、落ち込んだ表情になる。

「ダイハナンは…」

 次の言葉がデュエイにとって最も言いにくい言葉だった。

「陥落…した」

 ダイハナンは陥落した。アクレドとレガーノとゼファルがその言葉を受け止めるまでに数秒かかった。デュエイはレイザの裏切りによるダイハナンの陥落、背後にいたゼストウラの陰謀、そして船でアルバートまで行き、途中で森の火事に巻き込まれアクレドとレガーノに助けてもらったところまでをゆっくりと説明した。

「俺はデュエイと付き合いが長いから本人だってわかるが、城に行ったって信じてもらえず追い返されるだろうな」
「ゼストウラがアルバートに手を出すとは思わんが、それでもフェルスナー様の保護だけはお願いしたいものだ」
「ところでアクレド、お前が言う森を燃やした張本人って言うのは?」
「よく解からんが、宙に浮いてるわ攻撃は当たらないわで人間じゃない」
「魔王軍か?」

 ゼファルがそう考えたが、デュエイが首を横に振る。

「アルバートの勢力は魔王も知ってるから、うかつに手を出せんはずだ。それに森を燃やしたところで魔王軍に何のメリットも無い」

 アクレドとレガーノは考え込んでしまった。確かに森を燃やしたところでアルバートにダメージはない。寒い国なので森の木も大した材木にならないのは知られているはず。魔王軍に限らず森を燃やすメリットがある者がいるとは考えにくい。

「ただ…」

 アクレドは紙の上に紋章のようなものを描いた。

「奴のマントにはこんな紋章が描いてあった」

 全員が顔を覗かせて紋章を見るが、全員が首を傾げる。全く心当たりが無いことは、表情を見れば理解できる。とりあえず後で本部に持ち帰って調べてみると言うことでメモはゼファルが預かることにした。

「それよりも、フェルスナー様を城で保護してもらいたいのだが、ゼファルが直接頼んでもダメな話なのか?
「確かに聖騎士団はアルバートのための団体だけど、結局は外様だ。直属の者じゃないから聞いてもらえないだろう」
「そうか…。フェルスナー様が本物だって信じてもらえる方法なんて…」

 そこでデュエイの台詞が止まった。ゼファルも何か言いたそうに口を開けている。どうやら二人は同時に同じことを考えたようだ。

「儀式の泉!」

 今度は二人同時に同じ言葉が出た。
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