光の彼方
TIME GATE   HARD FINAL EPISODE


 一階まで辿り着き、あと少しだと思ったが、三人は思わぬ人物と遭遇してしまった。

「逃がすと思ったか?」

 廊下の真ん中で立っている男を三人が知らないわけがなかった。それはまさしくダイハナン反逆の首謀者であるレイザなのだから。三人が城から脱出してここに来ることまで解かって来たのだろう。

「レイザ!」
「ほう、これはデュエイ隊長ではないですか。おっと、もうダイハナンは終わったのだ、隊長なんて呼ぶ必要もないですね」
「ダイハナンは終わらないさ、フェルスナー様は健在なのだ。そしてこの俺が命に代えても守ってみせる!」

 デュエイは二人がレイザに手出しされないよう剣を抜いて構える。今の台詞を聞いてレイザは笑い出した。

「その小娘が健在だからどうした?三人で何が出来るというんだ?」
「貴様らを全員倒し、今度は俺達がダイハナンを取り戻すさ」
「フ…デュエイらしい台詞だ」

 デュエイは剣を手に持って構えるが、レイザは余裕なのか考えがあるのか、まだ剣を持って構えようとしない。

「デュエイ、ゴルトル、考え直さないか?そんな小娘は捨てて、俺達に協力しないか?」
「何を考えている?」
「アルバート大陸を統一するのだ。このゼストウラとダイハナンが統一されれば、おそらくかつてのアルバートほどの武力が蘇るだろう。その武力を持ってすれば、他の国も簡単に制圧できるだろう。それがゼストウラ王の考えなのだ」
「で、お前にその話が来て…お前は乗ったわけか」
「もしもダイハナンを手にした場合は、ダイハナンの管理を任せると約束してくれたのだ。俺はお前と違うんだ、乗らないわけがあるまい」

 フェルスナーは膝を崩して泣き始めた。

「そ、その為にお父様まで殺したの?関係ない国民や使用人まで殺したの?」
「お穣ちゃん、大人ってこういうものなんだよ」

 レイザの顔には悪意のこもった笑みが浮かぶ。その顔がデュエイの怒りを更に掻き立てる。

「さてと…」

 レイザの顔が真顔になる。

「ゼストウラ王に豪快な一撃を放ったみたいだが、今からでも間に合う、俺達に協力するって言うなら許されるぜ。フェルスナーも殺さないって約束しよう」
「………」
「これは冗談じゃない、俺はお前達の実力を知ってるから言ってるんだ。もう守っても意味のないダイハナンは忘れて、その力を俺達の為に使わないか?」

 協力すればフェルスナーの身の安全は約束される。一瞬はそれもいいかと考えたが、それをプライドが許さなかった。

「レイザ…俺達の実力を買ってくれることは嬉しい。だけど、フェルスナー様がいるからこそダイハナンじゃないのか?お前が国王になって市民が認めるのか?」
「制圧するんだ。圧力をかけて認めさせるさ」
「それじゃあ帝国だな。死んだ目をした国民を制圧し、己は思うがままに暮らすと言うわけか。良い身分だな」

 デュエイは話しながらもレイザとの距離を少しずつ縮める。

「それで、お前達の答えはどうなんだ?」

 レイザの問いかけにデュエイは止まったが、すぐにレイザとの距離を縮め直す。お互いの距離が縮まり、デュエイの射程距離に入ったところでレイザも構え始めた。腰に装備されている短剣に手が添えられる。

「…それが答えか?」

 デュエイは答えない代わりに、レイザに向かって疾風突きを放った!レイザは短剣でそれを受け止めたが、勢いが余って壁に激突する!デュエイは手を休めず、そのまま剣を振ることで生じる衝撃斬でレイザに追撃をした!

「クッ…上等だ!」

 レイザが起き上がろうとしたが、既にデュエイは目の前に来ていて突きの構えをしていた!レイザは横に逃げデュエイの剣が壁に突き刺さる。刺さった剣の位置はレイザの頭を狙っていたことを教える。

「デュエイ…頑張って」

 戦うことのできないフェルスナーは、デュエイの勝利を祈るしかなかった。

「やってくれたな!今度は俺の番だ!」

 レイザも短剣を振り、勢いのある衝撃斬を放った!デュエイの目が鋭く光り、剣を大きく振るとレイザの衝撃斬が簡単に消えた!それと同時にレイザが飛び退くと、大きな音と共に床に大きな切れ目が入った!

「掛かったな!空中では体勢は変えられない!」

 空中にいたレイザをデュエイは叩き落した!床に激突し、バウンドして宙に浮いた瞬間を体当たりで吹き飛ばし、再び壁に激突させた!

「がはっ!」

 背中を強く打ちつけ、レイザは吐血した!

「バカな奴だ。お前程度の腕で俺が倒せるとでも思ったのか?」
「フッ…戦えばこうなることくらい…解かっていたさ」
「さっきの衝撃斬も俺が教えたのだ。通用するわけあるまい」
「試しに放ってみたが、やっぱり通用しなかったか」

 相当なダメージを受けていたため、レイザはフラフラと立ち上がる。

「だが、こうすればどうかな?」

 レイザは向きを変え、デュエイにではなくフェルスナーに向けて衝撃斬を放った!

「し、しまった!」
「ええい!プロテクター!」

 フェルスナーの前にゴルトルが立ち塞がり、防御魔法のプロテクターで衝撃斬を受け止めた!

「ぐっ!ぐわあ!」

 受け止めたと思ったが、あまりの勢いの強さにゴルトルの体が弾き飛ばされた!これでフェルスナーは無防備になってしまった!

「あばよ!フェルスナー王女様!」

 レイザはその瞬間を見逃さず、そのままフェルスナーに衝撃斬を放つ!

「フェルスナー様!」
「デュエーーーーーイ!!」

 もう間に合わないと思ったが、技が当たるよりも速くデュエイがフェルスナーを抱きかかえて庇った!フェルスナーは無事だったが、デュエイの背中に大きな切り傷ができてしまった!

「ご…ご無事でしたか…」
「デュ…デュエイ…」

 フェルスナーは泣きそうな顔になったが、デュエイは額に汗を浮かべながらも笑顔でフェルスナーに話しかける。

「泣かないで下さい。これが私の役目ですから」
「うっ…くっ…」

 ゴルトルがよろめきながらデュエイに近付く。

「酷い傷じゃ…すぐに魔法で回復…うがあ!」

 魔法で治そうとしたゴルトルをレイザは蹴り飛ばした!

「クソジジイ、余計なことをするな」

 レイザは立場が逆転したことを確信して余裕の顔になる。

「バカな奴だ。そんな小娘をかばって傷を負いやがった」

 レイザが近付いたことでその場を動けなくなったデュエイは、傷を負っているのにも関わらずフェルスナーをかばうのを止めない。そんなデュエイを見たレイザは、背中にできた傷口を蹴りつけて痛めつける。

「ぐ…ぐあ!」

 さすがのデュエイも痛みで表情が歪む。

「ハッハッハ!おらおら!いつまでそんな小娘をかばってるんだ?お前がそうしている限り、俺の足はお前の傷口を蹴り続けるぞ」

 蹴られても蹴られてもデュエイは動こうとしない!ゴルトルは強く蹴られたのか、その場にうずくまって動けなくなっている。
 それから数分が過ぎたが、デュエイは背中から血を流していながらもかばい続ける。だが、その表情は限界が近いことを教える。レイザも蹴り続けていたために息が切れる。

「その忠誠心は見事だが、ここまで来ると興が冷めるな」

 レイザはゆっくりを短剣を構える。

「これで終わりだ!」

 レイザが短剣を突き刺そうとしたが、デュエイが素早く振り向き、スキだらけだったレイザの体を全力で攻撃した!

「うおおおおおおおお!」

 レイザの鎧が粉々に砕け、そのまま壁まで激突したかと思うと、そのまま壁が砕けてレイザは壁の向こう側まで吹き飛んだ!相当なダメージなのか、レイザはしばらく動けない様子だった!

「ゴルトル!大丈夫か?」
「う、うむ、何とかな」
「こっちから物音がしたぞ!」

 廊下の奥から兵士の声が聞こえる。足音からして十数人いる。

「チ、レイザを倒したと思ったが…」

 万全であれば何とかなるが、今は自分もゴルトルもダメージを負っていて満足に戦うことができないのだ!

「皆さん、こっちです!」

 目の前のドアが開き、中から使用人が顔だけ出して三人を呼んだ!

「あ、あなたは…!」

 フェルスナーはその顔に見覚えがあった。それは、今朝に自分の着替えを手伝ってくれたあの使用人だった。
 フェルスナーに迷ってる時間はなかった。フェルスナーはすぐにその部屋に入り、デュエイとゴルトルも続いて部屋に入った。
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