光の彼方
TIME GATE   HARD FINAL EPISODE


 デュエイは剣を直接渡そうとはせず、床に突き刺して腕を組みながらゼストウラ王を睨む。兵士達に警戒心が生まれる。

「剣が欲しければ取りに来ればいいだろう。ほら、キサマの欲しがっていた剣は、こうして床に刺さっているぞ」

 デュエイらしくもない妙な行動ではあったが、過信しているゼストウラ王から見れば、それは諦めた行動にしか受け止められなかった。もちろん、デュエイはそこも見透かしてこの行動を選んでいる。

「ふふふ…なるほど、これは立派な剣だ。兵士長が持つ剣とは、ここまで素晴らしいとはな」

 ゼストウラ王が剣を取ろうと手を伸ばしたが、わずかな差で先にデュエイが剣を手に取った!あまりの速さにゼストウラ王がそれを理解するまでに一瞬の間があった。だが、デュエイにとっては十分な時間である。

「喰らえ、疾風突き!」

 風のように速く、そして槍のように鋭いデュエイの必殺技である「疾風突き」が、ゼストウラ王の胸を確実に捕らえて突き刺さる!あまりの勢いで受身が取れず、ゼストウラ王の体が壁まで吹き飛ばされた!
 鈍い音がしてゼストウラ王の体が床に崩れるが、デュエイの顔は不満そうに見える。

「クソ、服の下に鎧を着てるな」

 でも不意打ちにしては上出来だったので、デュエイは素早くフェルスナーの元まで戻って二人を護る体勢に入る。

「ク…クソ!こ、殺せー!」

 ゼストウラ王の一声で兵士達が詰め寄ってきた!ゴルトルの額に冷や汗が流れる。

「デュエイ…お主は何を考えておるんじゃ?あんなことをすれば、こんなことになるのは解かっておったじゃろ!」
「ああ、解かってたよ。兵士達がこうやって襲ってくることなんて…。そしてこれがチャンスだってこともな!」

 デュエイはゆっくりを剣を振り上げる。

「お前達ゼストウラ兵は、王が命令するまで動かないんだろ?残念だったな」

 デュエイが勢いよく剣を床に突き刺すと強力な衝撃波が生まれて、自分達を囲んでいた兵士全員が床や柱に叩きつけられた!ゴルトルとフェルスナーは身を伏せていたために巻き込まれることはなかった。

「フェルスナー様、逃げますよ!」

 デュエイが先頭に立ち、ゴルトルが背後を守る形でフェルスナーを連れて、三人は謁見の間を逃げ出した。

 謁見の間を出た途端に二人の兵士が斬りかかろうとしたが、デュエイの剣太刀で簡単に薙ぎ払われる。謁見の間を出ても悪状況が続くので、デュエイは一刻も早く城を出なければいけないと焦りが生じていた。

「フェルスナー様、ゴルトル、城の中はどこも危険だ、一気に駆け抜けて脱出だ!」

 デュエイが剣を振ると衝撃波が生まれ、廊下にいた兵士が全員吹き飛んだ。それに続いて三人は廊下を駆け抜ける。この広い城から出ることを考えると、少しでも力を温存しておきたいところではあったが、時間的に余裕がないのでデュエイは大技を繰り出す。
 城の二階に着いたところで三人の足が止まった。兵士達の部屋の前だったらしく、部屋の中から多くの兵士が次々と出てくる。

「ク…しくじったか…」

 デュエイは、多数の兵士をも一度に倒す大技を出そうとしたが、ゴルトルがそれを止める。

「無駄に力を使うでない!ここはわしに任せてみろ」

 ゴルトルが魔法を唱え始めると、あたり一面が紫色の煙に包まれた。フェルスナーは毒ガスかと思って鼻と口を塞ぐが、デュエイが全く気にしてない様子を見てすぐに手を離した。もしもこれが危険なものであったら、デュエイが事前に注意するだろう。
 しばらくして紫色の煙が晴れたと思うと、廊下を塞いでいたはずの兵士全員が、その場に倒れながら眠っていた。

「スリープと言う魔法ですじゃ。敵を眠らす効果がありますぞ」

 ゴルトルが自慢げに笑みを浮かべる。

「助かったぞゴルトル!さあ、この階も一気に行くぞ!」

 三人は眠っている兵士を踏みつけながら廊下を走る。と、その時フェルスナーの動きが突然止まった!

「キャア!」

 フェルスナーの足元を見ると、眠らせたと思っていた兵士の一人が完全に眠っておらず、朦朧とする意識の中でフェルスナーの足を掴んでいる。

「に、逃がさないぞ…」

 フェルスナーは必死で振り払おうとするが、フェルスナーでは兵士の力に勝てるわけがない。デュエイが助けようと飛び掛ったが、それよりも速くフェルスナーの大胆な行動が起こった。
 フェルスナーは廊下に飾ってあった壺を拾い上げたかと思うと、それを思いっきり兵士の頭に叩き付けた!
 ガシャン!という高い音と共に壺が砕け、フェルスナーの足を掴んでいた兵士は、白目になって気を失っていた。
 荒れた呼吸を整えてから我に返る。

「ご、ごめんなさい!驚いちゃったから…」

 フェルスナーは気を失っている兵士に謝る。デュエイとゴルトルは見てはいけない物を見てしまったような顔をしている。

「い、意外と怖いことをするんですね」
「思わずやっちゃった…」

 何とか難を逃れ二階を駆け抜ける三人だったが、今の出来事で緊張感が完全に消え失せてしまっていた。
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