光の彼方 |
TIME GATE HARD FINAL EPISODE |
窓から差し込む太陽の光で、フェルスナーは目を覚ました。とても目覚めのいい朝だった。昨日のことの実感を忘れてしまいそうなくらいに…。 フェルスナーが部屋の中を見回すと、デュエイもゴルトルも大きな毛布に包まって床の上で眠っていた。ベッドは1つしかなかったので、二人とも自分のことを気遣ってくれたのだと思うと、何だか申し訳なく思う。城を失っても、命を賭けて自分に仕えてくれている二人には、言葉では言い切れないほどの感謝の気持ちがある。 普段なら、自分が目覚めると必ずデュエイは既に起きていて、挨拶をしてくれていたのだが、よほど疲れていたのだろうか、自分が目を覚ましていても起きる気配がなかった。よく考えれば、デュエイが眠っている姿を見るのは初めてかもしれない。 「ん…」 ぐっすり眠っていたデュエイがゴソゴソと体を動かす。どうやら目が覚めたようだ。体を起こしてまだ眠たい目を擦る。 「フェルスナー様、お早うございます」 デュエイは、眠気混じりの笑顔でフェルスナーに挨拶をした。 「お、おはよう…」 デュエイは挨拶を済ませると、顔を洗いに行くといって部屋を出る。それに反応してゴルトルも目を覚ました。ゴルトルもフェルスナーに挨拶をしてから顔を洗いに部屋を出た。 自分も鏡を見て、顔が少し汚れていることに気が付いた。自分も顔を洗いに行きたいところだったが、勝手に部屋を出ていい状況ではない上、勝手に出たところで迷うのは目に見えていた。二人に付いて行けば良かった…。 そう思っていると、誰かがドアをノックした。 「だ、誰?」 「使用人でございます。デュエイ様とゴルトル様からのお願いで、洗面のご用意とお着替えの手伝いをするようにと…」 「そ、そうなの…。じゃあお願いするわ」 「失礼いたします」 洗面道具と着替え一式を持った使用人が部屋に入ってくる。 使用人が手伝いながら顔を洗い、新しく用意されたドレスに着替え始める。フェルスナーは着替えながら「こんな服があるなんて、準備いいわね」と言うと、使用人は「昨日、デュエイ様から頼まれました」と答えた。そして使用人はクスクスと笑い出す。 「な、何か変なコト言った?」 「いえ、それにしても、フェルスナー様は本当にいい兵士と家臣をお持ちになられましたね」 「………」 「デュエイ様もゴルトル様も、もう何年も前からこの城に時々来られてますので、私もお二方の事は良く存じてます」 「私は良く知らないんだけど、そうみたいね」 「デュエイ様は、ゼストウラ兵士長を上回る強さを持っていて、とてもカッコイイ男性ですから、ゼストウラの使用人の女性の間でも人気が高いんです。ゴルトル様は、この国でも顔が広く皆に優しいので、私達から見れば、父親みたいなものです」 「へえ…そうなんだ…」 使用人が発した「いい兵士と家臣」という言葉。フェルスナーは普段から二人を見ているせいもあって、他の人がどう評価しているかなど、考えたこともなかった。こうやって人の評価を聞くと複雑な気持ちになる。 その後も使用人が手伝いながら着替えを済ませる。部屋を出て行く使用人と入れ違いでデュエイとゴルトルが入って来た。着替えている間、ずっと待ってくれていたのだと解かる。 先ほどの会話を聞かれたかも知れない! 「着替えられて、スッキリされましたね」 「あ…あの…デュ、デュエイ…」 何と言えばいいのか言葉が見つからない。 「ど、どうかしましたか」 「あの…その…デュエイ…と…ゴルトルは…」 「フェルスナー様、どうされたのですじゃ?お腹でも減りましたか?朝食なら部屋に運んで下さるという事ですぞ」 「え…あ…そ、そうなんだ…」 話の論点が合わないことから、さっきの会話は聞かれなかったみたいだ。それを確信してフェルスナーは安心した。 それからすぐに先ほどの使用人が料理を運んで来てくれたので、三人はテーブルを囲って朝食をとることにした。 フェルスナーは始めて見る料理ばかりだったが、どれもおいしいものばかりだったので、フェルスナーは味わいながらゆっくりと食べる。デュエイはさすがに食べたことがあるのか、特に何も言うことなく食べ続けていた。だが、ゴルトルだけは食事に手をつけることなく、何か不満そうな顔をしていた。 「ゴルトル…どうしたの?食事が口に合わなかった?」 「いえいえ、ワシはただ、ゼストウラのこの態度に不満があるだけですじゃ」 「態度って…?」 「ゴルトル…お前も不審に思ったか…」 今まで黙々と食べていたデュエイが口を挟んだ。 「デュエイ…ゴルトル…不審って?」 「さっき…顔を洗いに行った時に兵士から話を聞いたのですが、今日の昼頃に国王はワシらに会ってくれるとのことですじゃ。ですが、どうも納得行かんのですじゃ。最低限の話を聞くだけであれば、この朝食時に同席させれば済むはずのことだったというのに、なぜそうしないのかということですじゃ」 「しかも、フェルスナー様に客室で、しかもこんな使用人が食べる庶民料理を朝食に出すなど、失礼にも限度ってものがあるぞ」 料理を見たことなかったのは、ダイハナンと食文化が違うのではなく、出されたのが庶民料理だったからなのか…。しかしとてもおいしいので、そこはフェルスナーにしてみれば、問題と言える部分ではなかった。 しかし、朝食を会食みたいに席を作って同席させないという部分は、フェルスナーも少しだけ不安に思った。昨日のゴルトルもそうである。ゴルトルの話からすると、用件すら国王は聞いていないのが解かる。しかも緊急事態だというのに、その日の接触を避けるという態度。どうも腑に落ちない点が多い。 「ねえ…ゼストウラ王は、何か隠しているんじゃないのかな?」 「隠している…とは?」 「緊急事態だから私達は来たんだよね。私がゼストウラ王の立場だったら、どんなに忙しくても絶対に昨日の内に会ってると思うんだけどなあ…」 「………」 「………」 デュエイもゴルトルも、その辺は何となく感じていたのかも知れない。フェルスナーと同様で、自分がゼストウラ王だったらどうしていたか?ということくらいは考えたのだろう。ただ、王族ではない分、そこの勘は鈍いのだ。 「ワシが昨日着いた時も、すぐに会ってくれるように頼んだのじゃが、忙しいから今日は無理だとか言って客室に通されたのじゃ」 「で、私達に会ったわけね」 「ですじゃ」 三人はハッキリとゼストウラの不審を感じ取った。三人は同時に、今回の件とゼストウラは関わりがあるのではないかと考える。そして何かを意図的に隠している。フェルスナーが普通の客室待遇だということを考えると、重要視していない可能性もあるが…。 とりあえず朝食を済ませ、国王から呼ばれるのを待つしかない三人だった。デュエイはフェルスナーの様子を気にすることなく、窓辺の席に座りながら外の様子を見るばかりだった。ゴルトルはデュエイの向かいの席に座り、何かを考えているような顔をしていた。フェルスナーはベッドに腰掛けながら、時間が過ぎるのを待っていた。間もなく時間だろう。 そう思っていると、ノックの音が聞こえた。全員がそれに振り向く。 「お待たせいたしました。謁見の間へどうぞ」 「解かったわ」 三人は部屋を出て、兵士に続くかのように通路を歩く。これから自分達はどうするべきか?これから何が起こるのか?全てはここからだ。 |
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