光の彼方
TIME GATE   HARD FINAL EPISODE



 今一度、歴史を振り返ろう。

 何かの終わりは何かの始まりである。そして始まりは終わりを迎える。

 幾度もの戦いが始まり、そして終わり、また新たな戦いの始まりを迎える。そうして遥か昔から幾度もの戦いを歴史は刻んでいる。その戦いに善や悪は関係ない。自分が善と思ったものは善で、自分が悪と思ったものは悪なのだから。もしかすれば、全てが善だったのかも知れない、最初から善など無かったのかも知れない。

 「聖戦士ハード」と「神王」今までの戦いでは、この2つがキーワードだった。

 時はハード暦2120年、惑星ウォルクは光に満ち溢れていた。この世からモンスターが完全に居なくなることは無かったが、最終神王降臨と呼ばれる伝説が誕生してから1000年もの間、この世界は平和を保ち続け、それを安定し続けていた。しかしその安定を手に入れるために、過去に悲しい物語が刻まれている。

 ハード暦1000年に起こった創造神と聖戦士の戦い。

 1020年に起こった聖と魔を同時に宿した悲劇。

 1120年に起こった神王族の絶滅と最終神王の降臨。

 それら全てが今のウォルク人々には太古に起こった物語して記憶され、書物に記される程度の歴史の一部でしか無かった。だがそれは同時に、恐ろしくも人々を平和という名の美酒で酔わせてしまうという意味も含まれている。戦いの絶えないこのウォルクに、永遠の平和などありえないということも忘れて・・・。

 遥か昔、ある戦士たちがこのような言葉を聞いた。

「敵というのは、いつ訪れるかわからない。だから、人は常に強くなければならないんだ。人が強くあるためには、強い敵が必要だ。強い敵を倒そうとするために人は強くなるんだ」

 それは、最終神王降臨の時代。そしてその「敵」となるために魔王は存在し、その成果が大成功へと導いたこともあった。だが、それも人々が酔いしれる平和という言葉に掻き消されてしまった…。

 そんな時代だからこそ、悲劇が起こることもありえる。それは、戦いを忘れたウォルクに下された神の審判なのかも知れない。



 どこの国でも夜になると、昼間は活気に満ち溢れていた城下町も、昼間の活気が嘘の様に不気味で静まり返ってしまう。そんな城下町を巡回している警備兵の影が薄く長く延び、その気味悪さが増してしまう。
 このダイハナン城下町もそんな気味悪い夜を迎えている。ダイハナン王国は城を中心に周りを城下町で囲っている美しい街である。この城にいるフェルスナー王女は今年で16歳になり、母親に似てとても美しいと国民には大変な人気である。

 ダイハナン王国は、アルバート大陸の南にある国である。かつてこのアルバート大陸はアルバート王国が治めていたが、ハード暦1700年を境に城のあった場所を国境に北のゼストウラ王国と南のダイハナン王国の2つに分けられ、スノーエリアにあった、アルバートの姉妹国であるライファ王国をアルバート王国へと名前を変え、そうしてゼストウラとダイハナンは国民の希望と喜びに満ち溢れ、共に栄えていたのだ。

 そんなダイハナンの夜は紅く染まった。城の色々な場所から吹き出る炎。その炎が暗い夜空を紅く染めた。街の至る所に傷付き倒れる多くのダイハナン兵と市民。騒ぎながら逃げ惑う城下町の住民。一夜にして大国であるダイハナンは陥落し、城下町には地獄絵図が描かれるという信じ難い事態が起こった。内部の者の反乱という予想しなかった事件は、大きな国も一夜で飲み込んでしまうほど恐ろしいのであった。国民の希望と喜びを糧にして…。

 紅く燃え上がる城の中では、ロイヤルナイトの装備に身を包んだ若い男が指揮を取り、それについて来る多くの者が城の様々な物を引っくり返しながら何かを探していた。城の中も多くの兵士の亡骸が見られる。

「どこかに隠れているはずなんだ、何としてでもフェルスナー王女を探し出すんだ」

 厳しい口調で全員にそう命令しながらも自分でも王室などを調べていた。

 そんな騒動の中、謁見の間の王座には胸を血で真っ赤に染めたまま動かない国王が座っていた。何も見ていないような、虚ろな瞳。そして胸の辺りから流れる大量の血は、赤かった絨毯をより真紅に染めていた。

「国王は俺が仕留めたんだ。残るフェルスナー王女さえ殺してしまえば、このダイハナン王国は我々のものになるのだ!」
「しかし、これほどの騒ぎだと言うのに、城にいるはずのデュエイ兵士長が現われるような気配がありませんね」
「兵士長といえど所詮は人間。この騒動を目の当たりにして、王女さえも見捨てて逃げたに決まってるだろう。ハッハッハッハッハ!」

 紅く燃えるダイハナン城の中に笑い声が響き渡った。

 ハード暦2120年。ロイヤルナイトのレイザが率いる250人を超える反乱軍によってダイハナン王国は崩壊した。
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